未来健康通信2024年11月号
【今月の特集】
『痛みが消えた!?「痛み」と虫歯』
「むし歯」と一括りにいっても生じる痛みの程度は様々です。また強い痛みがあったのに時間がない!と我慢していたら痛みがなくなったということはありませんか?これはどうしてなのでしょうか。
今回はむし歯の「痛み」に注目してみましょう。
●歯の痛みのセンサー
歯の痛みと聞いて思い浮かべるのは歯の神経ではないでしょうか。歯の神経は歯髄と呼ばれ、周りを象牙質で囲まれており、その上にエナメル質があります。
歯髄は三叉神経につながっており、痛みを伝えるセンサーのような働きをしています。
●痛い?痛くない?
むし歯で全く痛みがない状態というのはむし歯がエナメル質だけの場合です。この時痛みはほぼありません。この時点で治せば痛い思いはせずにすみます。
虫歯が進みエナメル質に穴があき、象牙質にまで至るとキーンとしみたりチリッと響くような痛みが生じます。いわゆる知覚過敏です。痛みはそれほど強くありません。この状態であればしばらくすると唾液などの自然のバリアに覆われて痛みは治まっていくことがほとんどです。
更に虫歯が進み、象牙質に炎症が広がるとその隣の歯髄にも細菌が入り込み炎症が起こります。炎症を起こした歯髄は化膿し腫れ上がりますがこの時、膿の逃げ場がないため歯の内圧が高まるにつれて神経が圧迫されて激烈に痛むようになります。
ところが虫歯が更に進行して象牙質に穴があくと膿の逃げ場ができて歯の中の圧力が一気に下がります。痛みが引いていくので、多くの人はホッとして、歯科医院に行くのをやめてしまうかもしれません。しかしこれは実際には治ったり良くなったりしたのではなく、虫歯によって一段と歯が壊れている状態なのです。
楽になったからとこのまま放置すると病状は更に進行し、ついには歯髄が壊死してしまうため歯の内部で何が起ころうと痛みを感じなくなってしまいます。
●まだ痛むそのわけ
さて、歯髄が壊死すると歯自体の痛みはなくなります。症状が落ち着いて、安心される方もおられるでしょう。
しかし今度は歯の内部だけではなく、より広範囲に、歯根膜、歯槽骨などへ炎症が広がっていきます。そうなるとまた鈍い痛みを感じたり、時には再び強い痛みを感じるようになります。
歯の神経である歯髄が壊死しているのになぜ『痛い』のでしょうか?それは歯の外側にも痛みのセンサーとなる神経が張り巡らされているからです。歯の内部から歯根の先へと押し出された膿は歯槽骨の中に袋状にたまり、この膿に歯根の先を通る神経が圧迫されると、あるとき強い痛みが起こるのです。
また治療で神経をとったのに痛みや違和感が続くこともありますが歯の内部の治療をしても感染が歯の外側にまで及んでしまっているとそちらの炎症はすぐには治まりません。それでも歯髄を取り、歯の中をきれいに掃除し、殺菌し、しっかりとフタをしてしばらくすると身体の抵抗力によって歯の周囲の炎症は徐々に治まってきます。
●早期発見!
むし歯の進行と痛みは決して比例しているわけではありません。痛みが落ち着いたからと治療を先延ばしにしていると最悪、歯を失ってしまうことも…。虫歯が小さなうちに歯科医院に行くのはもちろん、定期的にメインテナンスを受けて早期発見!虫歯予防!を心がけましょう。
【Drブログ】
Dr 山田 真衣
『ジブリ展』
みなさんはジブリを観たことがありますか?いくつもの名作がありますが、私は「となりのトトロ」や「魔女の宅急便」が好きで、ビデオテープが擦り切れるほど何回も繰り返し観た思い出があり、ストーリーだけでなくセリフまでも覚えています。その思い出のジブリが秋田にやってくるという情報を入手し、先日秋田県立近代美術館へ行ってきました。開催されている「金曜ロードショーとジブリ展」は東京展や京都展など全国を点々と回っているようで、東北は秋田と福島(来年の夏)で開催されるようです。
美術館に入ると、最初のジブリ作品「風の谷のナウシカ(1984)」から展示が始まり、1年ずつ歴史を追うことができます。ジブリ作品の実際の絵コンテや作業の様子に加えて、当時の日本の出来事や流行っていたものなどがまとめられたブースがあり2024年までゆっくりと観ることが出来ます。さらに進むとジブリのキャラクターの展示が始まります。一番迫力があったのは、大きな王蟲のモニュメントです。部屋全体が腐海を表現していたり、王蟲の目の色が青から赤に変化したりと、まるで自分がナウシカの世界に入り込んだかのような感覚でした。写真は「千と千尋の神隠し」に出てくる湯屋です。夜になると、建物内側からライトアップされ、幻想的な雰囲気に包まれます。ジブリ好きにはたまらない展示ばかりですので、是非足を運んでみてください。
【そこが聞きたい!Q&A】
今月の担当
Dr. いわなみ よういち
Q. 歯科の往診はしてもらえるの?
A. 高齢あるいは心身の障害や重い病気などのために介護を受けている人は、歯科への通院が困難です。むし歯や歯周病などの治療だけでなく、入れ歯やインプラントのメインテナンス、口の中の衛生が後回しになりがちです。特に、体力が落ちてきた高齢者にとっては、口の中の衛生状態が、誤嚥性肺炎につながるように、からだの健康に直結する場合があります。そのような人のために、歯科医師と歯科衛生士が機材持参で、自宅や施設まで来てくれるのが訪問診療です。利用条件は「自力で通院できないこと」と歯科医院から半径16km以内の場所までということです。歯科で行うおもな治療のほか、入れ歯の洗浄や歯石除去など歯周病管理も行います。利用をお考えの際は、一度歯科医院に問い合わせしてください。